「FX取引で得た利益の確定申告が必要かどうかが分からない」「いくらから確定申告を始めるべきか分からない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
FXで利益が出ているのに確定申告を行わないとペナルティが課される可能性があるため、適切な対応が必要です。
今回は、FX取引における確定申告が必要なケースや不要なケース、申告のために知っておくべき基本的なポイントについて詳しく解説します。
「確定申告が必要になる収益額を知りたい」「確定申告に必要な手続きを知りたい」といった方は、ぜひ参考にしてください。
FXの確定申告はいくらから?必要・不要なケースとは?
FXで得た利益に対し、確定申告が必要になるタイミングはいつなのか、疑問に感じている方も多いでしょう。
まずは、FXで確定申告が必要なケース・不要なケースについて、それぞれ解説します。
FXで確定申告が必要な3つのケース
FXで確定申告が必要なケースとして、以下の3つがあります。
- 年収2,000万円を超える場合(利益に関わらず確定申告が必要)
- FXや副業で年間20万円以上の利益がある場合
- 扶養に入っておりFXの所得が48万円を超える場合
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
年収2,000万円を超える場合(利益に関わらず確定申告が必要)
年収が2,000万円を超える場合、FXの利益の有無にかかわらず確定申告が必須です。これは、所得税法第190条により、年収2,000万円を超えると年末調整が実施されないためです。
たとえ会社員であっても、年収2,000万円を超えると、社会保険料控除や生命保険料控除などの適用が受けられず、源泉徴収された税額が異なる可能性があります。
また、きちんと確定申告をしないと配偶者特別控除や住宅ローン控除などの税制優遇も受けられなくなることがあるため、注意しましょう。確定申告を行うことで、これらの控除が適用され、正確な税額が確定します。
FXや副業で年間20万円以上の利益がある場合
FXを含む副業から得た所得が年間20万円を超えた場合も、確定申告が必要です。副業所得とは、FXのほか、不動産投資や株式投資、アフィリエイトWebライター、動画編集など、本業以外の収入源を指します。
ここで注意すべきなのは「収入」と「所得」の違いです。収入とは総支給額や売上を意味し、所得は収入から必要経費を引いた額です。必要経費には、FXの取引に関連するパソコン代や通信費などが含まれますが、プライベートと兼用する場合は使用割合に応じて按分する必要があります。
正確な情報をもとに確定申告を行うことで、税務上のトラブルを避けられます。
扶養に入っておりFXの所得が48万円を超える場合
扶養に入っている人がFXで得た所得が48万円を超える場合も、確定申告が必要です。
48万円とは「基礎控除」の額であり、合計所得が2,400万円以下の人に適用される控除です。この基礎控除を超えた所得に対し、税金が発生する仕組みです。
例えば、FXの収入が50万円で必要経費が10万円の場合、所得は40万円となります。この場合、基礎控除48万円との差額はマイナス3万円となり、課税所得は0円です。基礎控除を元に計算して所得が0円になる場合、確定申告の必要はありません。
FXで確定申告が不要なケース
反対に、FXで確定申告が不要なケースは、会社員の場合と学生・主婦の場合の2パターンに分かれます。
以下の表にまとめましたので、ご覧ください。
職種 | FXで確定申告が不要となる条件 |
会社員 | いずれも満たす必要あり ・年収2,000万円以下で会社から年末調整を受けている ・副業の年間所得が20万円以下である ・給与を受け取っているのが1ヶ所からのみである |
学生・主婦 | いずれかを満たす必要あり ・FXの利益を含む所得の合計が48万円以下である ・FXの利益を含むアルバイト等の所得合計が103万円以下である |
FXで損失が出た場合に確定申告するメリットはある?
FXで一定以上の利益が出た場合は確定申告が必要ですが、損失が出た場合、必ずしも確定申告をする必要はありません。
ただし、損失が出た際でも、確定申告をすることで以下のメリットがあります。
- 最大3年まで繰越控除を利用できる
- 損益通算で利益を合算できる
それぞれについて見ていきましょう。
最大3年まで繰越控除を利用できる
FXで損失が発生した場合、確定申告を行うことで「繰越控除」を活用できます。これにより、損失を翌年から最大3年間、店頭FXや取引所の先物取引などの利益と相殺することが可能です。
この仕組みを利用することで、利益が出た年の課税対象額を減少させ、結果的に納税額を軽減できます。
繰越控除を受けるためには、損失が発生した年に確定申告を行い、翌年以降も毎年確定申告を続ける必要があります。これにより、取引がない年でも申告を続けることで繰越控除の適用が維持される仕組みです。
このように繰越控除の制度をうまく活用することで、最大3年間にわたって税負担を軽減できるメリットがあります。
損益通算で利益を合算できる
FX取引を複数の会社で行っている場合、それぞれの取引の損益を合算して申告する「損益通算」を活用できます。
たとえば、一つの会社から50万円の利益を得て、もう一方の会社で20万円の損失があった場合、損益通算を行うことで実際の利益は30万円です。ここから必要経費を引いた額が課税所得として計算されるため、税額を軽減できます。
ただし、損益通算は「先物取引に係る雑所得など」として分類される取引同士でのみ適用されるため注意しましょう。具体的には、現物先物取引や商品指数先物取引などが該当します。一方で、暗号取引(仮想通貨)や海外FX業者での取引などは損益通算の対象外です。
適切に損益通算を利用することで、税負担を軽減できます。
FXにおける確定申告のやり方
FXにおける確定申告のやり方は、主に以下の3種類があります。
- e-Taxで書類を提出する
- 税務署へ直接書類を提出する
- 税務署へ郵送で書類を提出する
それぞれ解説しますので、自分にあったやり方で確定申告をおこないましょう。
e-Taxで書類を提出する
e-Taxを利用すると、オンラインで簡単に確定申告書を作成して提出できます。マイナンバーカードと対応するスマートフォンがあれば、誰でも利用可能です。
マイナンバーカードを持っていない場合は、事前に税務署でIDとパスワードを取得すれば利用できます。
申告後は「受信通知」で申告データが税務署に届いたことを確認でき、申告内容をダウンロードしてプリントアウトしておけば証明書としても活用できます。
税務署へ直接書類を提出する
確定申告書は、住所地を管轄する税務署の窓口に直接持参し、時間外収受箱に投函することでも提出できます。
なお、申告書の控えに収受日付印を押してほしい場合は、返信用封筒に切手を貼付し、申告書の控えを同封して郵送する必要があります。
また、確定申告書の書き方がわからない場合、税務署に相談することも可能です。
税務署へ郵送で書類を提出する
確定申告書を郵送で提出する場合、住所地を管轄する税務署または業務センターに送付します。なお、業務センターが設置されている税務署が管轄になる地域では、業務センター宛に郵送しなければならないため注意しましょう。
郵送方法は、郵便または信書便のみ利用可能で、宅配便やゆうメールでは提出できません。詳細な送付先や業務センターの情報は、国税庁のウェブサイトから確認できます。
また、控えに収受日付印が必要な場合は、申告書控えと返信用封筒に切手を貼って同封しましょう。確定申告書は重要な書類となるため、控えをもらっておくのがおすすめです。
FXにおける確定申告書類の書き方
FXの利益に対する確定申告では、以下2つの書類が必要です。
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
- 確定申告書
それぞれについて、書き方を解説します。
先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
FX取引の確定申告では「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を提出する必要があります。この明細書では、まず「所得の種類」欄にある「雑所得用」に丸印をつけ、納税者自身の名前を記入しましょう。
次に「取引の内容」欄には、取引の種類として「外国為替取引」を選び、決済の方法として「差金決済」を記入します。具体的な決済年月日や数量については、年間の取引をまとめて記載することが認められているため記入不要です。
「総収入金額」欄は、証券会社からダウンロードした「年間取引報告書」のデータをもとに記入します。ここには、年間の総収入を記載してください。
「必要経費等」欄には、FX取引に関連する費用を入力します。これには、セミナー費用や通信費、書籍代、パソコンの購入費用などが含まれます。
最後に、収入から経費を差し引いた金額を「所得金額(12)」欄に記入し、「合計欄」も忘れずに記入しましょう。
先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書は、こちらよりダウンロードできます。
確定申告書
確定申告書の第三表には、先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書の内容を転記していいきます。
「収入金額」「所得金額」の欄
まず「収入金額」の「分離課税」と「先物取引(ト)」の欄に、収入金額の合計を記入しましょう。
次に「所得金額」の「先物取引(74)」には、所得額(収入から経費を引いた後の額)を記入します。この金額は、明細書の「所得金額(12)」から転記するものです。
「税金の計算」の欄
「税金の計算」欄では、「総合課税の合計額(12)」と「所得から差し引かれる金額(29)」の部分に、確定申告書第一表から数字をそのまま転記します。なお、FXの利益はこの欄には含みません。
続いて「課税される所得金額」の「(12)対応分(77)」には、「総合課税の合計額」から「所得から差し引かれる金額(29)」を引き、1,000円未満の端数を切り捨てた金額を記入します。
そして「(74)対応分(82)」の欄には、先物取引(74)で記入した数字を1,000円未満を切り捨て転記します。
確定申告書第三表の右側の書き方
確定申告書第三表の右側には、自分で計算した税額を記入します。
「税金の計算」の「税額」欄「(77)対応分(85)」には、所得に対する税額を確定申告書第一表から転記しましょう。税額の計算には、国税庁のWebサイトにある速算表を使ってください。
FXの利益にかかる税金は「(82)対応分(90)」に記入し、計算には所得税率15.0%を用います。
最後に「(85)から(92)までの合計(93)」に合計税額を記入し、繰越控除がある場合は、(74)から差し引く繰越損失金額や翌年に繰り越す損失の金額も記載してください。
なお、繰越控除がない場合は(97)と(98)の記入は不要です。その後、第一表で復興所得税を含む最終的な税額を計算し、該当欄に記入します。
FXの確定申告についてよくある質問
ここでは、FXの確定申告についてよくある質問をまとめました。
FXで確定申告をしてない人は多い?バレないの?
FX取引で確定申告をしないと、税務署にバレる可能性が高いです。2009年からは、FX会社は取引の損益を記載した「支払調書」を税務署に提出することが義務づけられています。
さらに、口座開設時に提出するマイナンバーを通じて、税務署は納税者の取引状況や申告状況を把握できます。これにより、FXの利益や申告の有無は簡単に確認されるため、隠すことは難しいです。
確定申告をしないと、追加の加算税や申告期限を過ぎた後に発生する延滞税が課せられます。さらに、悪質と判断されると重加算税が適用され、非常に厳しいペナルティが科されることもあるため注意しましょう。
無職の場合、FXで確定申告が必要なのは利益いくらから?
無職や専業主婦(主夫)など他に収入がない場合は、FXやCFD、バイナリーオプションなどで得た年間の利益が48万円を超えると確定申告が必要です。
なお、収入がこの額を下回る場合、確定申告の義務は基本的にありませんが、申告することで還付を受けられることもあります。
学生の場合、FXで確定申告が必要なのは利益いくらから?
学生がFXで利益を得た場合、ほかに給与所得がなくFXのみの利益を得ているケースでは年間48万円以上の利益から確定申告が必要です。
また、FXのほかにアルバイトなどの収入があり、給与所得が年間130万円を超えている場合も、確定申告が必要となります。
個人事業主の場合、FXで確定申告が必要なのは利益いくらから?
FXを副業としている個人事業主の場合、FXの収入は雑所得に分類され、利益が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。
FXの収入を事業所得として計上するには、専門の機械や備品を購入し専業でFXを行っている必要があります。
まとめ
今回は、FXで確定申告が必要になる収入はいくらからなのか、確定申告が必要なケース・不要なケースについてそれぞれ解説しました。確定申告を行わないと税金の未納が発覚し、ペナルティを受けることになってしまう可能性もあるため、注意しましょう。
記事の内容を参考に、FXの利益に対する確定申告が必要な方は次の確定申告に向けた準備を進めていきましょう。