「FX取引における税率の計算方法が分からない」「どの税率が適用されるか分からない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
今回は、FX取引に適用される税率の基本や、税金の計算方法について詳しく解説します。
「FXで得た利益に対する税率について知りたい」「正確な税額の計算方法を知りたい」といった方は、ぜひ参考にしてください。
なお、本記事で主にお話しするのは、国内FXにおける税率や税金の計算方法です。海外FXの課税方法については、記事最後に簡単にまとめましたので必要に応じてご覧ください。
FXで得た利益に対する税率はいくら?
まずは、FXで得た利益はどのように課税されるのか、利益に対してかかる税金には何があるのかを見ていきましょう。
FXで得た利益は「雑所得」として課税対象となる
所得は以下の10種類に分類され、FX取引で得られる利益は、税法上「雑所得」として扱われます。
- 利子所得:公社債や預金、貯金から得られる利息に基づく所得
- 配当所得:株式の配当金や投資信託の分配金として得られる所得
- 不動産所得:不動産からの地代や家賃収入、さらには権利金によって得られる所得
- 事業所得:商業や工業、農業、漁業、または自由業から得られる事業収益
- 給与所得:給料やボーナスとして受け取る所得
- 退職所得:退職時に受け取る一時金や退職金としての所得
- 山林所得:山林を売却することで得られる収益
- 譲渡所得:株式や土地などを売却する際に生じる所得
- 一時所得:保険の返戻金や懸賞金、賞金など一度限りの収入から得られる所得
- 雑所得:公的年金や執筆料、講演料、FX取引など、他の9つの分類に当てはまらない所得
雑所得とは、給与や事業所得などの主要な収入以外の収入を指します。
この場合、所得税と住民税が課せられ、申告分離課税という制度が適用されます。申告分離課税とは、他の所得とは分けて計算し、確定申告を通じて税額を決定する方法です。
FX取引の利益については、源泉徴収が適用されないため、自分で確定申告を行う必要があります。また、雑所得は、給与所得や事業所得などと並ぶ10種類の所得の一つであり、FXに関しても雑所得として申告が求められます。
FXで得た利益にかかる2種類の税金と税率
FXで得た利益にかかる税金には「所得税」と「住民税」の2種類があります。
それぞれについて、概要を解説します。
所得税
所得税は、個人が年間の収入に基づいて納める国税で、1月1日から12月31日までの期間に得た所得が課税対象となります。
まず、年間の総収入から必要経費を差し引き、所得を算出します。その後、配偶者控除や基礎控除などの各種控除を適用し、課税所得金額を算出する仕組みです。
この課税所得金額に対して、5%から45%までの超過累進課税が適用されます。つまり、所得が増えるほど高い税率が適用されます。
会社員は通常、給与や賞与から自動的に源泉徴収されるため、確定申告は必要ありませんが、他の所得がある場合や自営業者は、自ら確定申告を行い、所得税を納める必要があります。また、2013年から2037年までの間に得た所得には、復興特別所得税が課せられ、東日本大震災からの復興に充てられます。
住民税
住民税は、都道府県や市区町村が課税する地方税で、地域の教育、福祉、公共サービスなどの資金を賄うために課せられます。住民税は、居住地の行政区によって管理され、通常は年間の収入に基づいて計算されます。
また、会社員の場合、住民税は給与や賞与から自動的に天引きされるため、自分で税額を計算したり、納付手続きを行ったりする必要はありません。しかし、給与以外の収入がある場合や自営業をしている場合は、確定申告を行った後に地方自治体から送付される納付書を用いて住民税を支払います。
住民税の額は確定申告の結果に基づいて自動的に計算されるため、納税者が直接計算する必要はありません。
FXで確定申告が必要な利益はいくらから?3つのパターンを紹介
FXで確定申告が必要になるのは、以下の3パターンがあります。
【パターン1:FXの利益に関係なく確定申告が必要】
- 給与所得が2,000万円を超えている
- 2ヶ所以上から給与を受け取っている
- 医療費控除や住宅ローン控除を初めて利用する
- 個人事業主である
【パターン2:FXの利益が20万円を超えたら確定申告が必要】
- 会社員で、なおかつ年収が2,000万円以下である
- 公的年金収入が年間400万円以下(年金生活者など)
【パターン3:FXの利益が48万円を超えたら確定申告が必要】
FXのみで収入を得ている専業主婦や学生
自分が該当するものを確認し、自身がFX収入において確定申告が必要なケースを覚えておきましょう。
FXで損失が発生した場合は税金がかからない!確定申告は必要?
FX取引で損失が発生した場合、基本的に税金はかからないため、確定申告は不要です。しかし、複数のFX口座や他の先物取引で利益が出ている場合は「損益通算」という制度を利用することで、確定申告を行った方が有利になる場合があります。
損益通算とは、例えばA社で50万円の利益があり、B社で50万円の損失が出た場合、これらを相殺して利益をゼロにできる制度です。この制度を利用することで、課税所得が発生しないため、税金を減らせる仕組みです。損益通算は、FX取引だけでなく、先物やオプション取引などでも適用されます。
さらに、損益通算をしてもその年に控除しきれなかった損失が残った場合は「損失の繰越控除」という制度が適用されます。この制度では、発生した損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の利益から控除できます。例えば、2023年に30万円の損失が発生し、2024年に20万円の利益、2025年に10万円の利益が出た場合、これらの利益から損失を差し引くことで、その期間は課税されずに済むというわけです。
ただし、損失の繰越控除を適用するためには、損失が発生した年とその後の3年間、毎年確定申告を行う必要があります。この申告を怠ると、繰越控除の権利を失ってしまうため注意しましょう。
FXの収益にかかる税率は20.315%!計算方法とシミュレーション結果
FX取引で得た利益にかかる税金は、所得税と住民税を合わせた税率で、合計20.315%となります。
なお、課税額は「所得(FX取引での利益)×税率」で算出されます。例えば、為替差益が60万円、スワップポイントが5万円、諸経費が5万円の場合、所得は「60万円+5万円-5万円=60万円」となり、60万円に20.315%を掛けた金額が税金として課される仕組みです。
ここからは、為替差益が100万円・300万円・1,000万円の場合について、それぞれ発生する税金額をシミュレーションした結果を紹介します。
シミュレーション1:為替差益が100万円の場合
為替差益が100万円で、スワップポイントが6万円、諸経費が5万円だった場合、所得は「100万円+6万円-5万円=101万円」となります。
ここに税率20.315%を掛けると「101万円×20.315%=20万5,181円(小数点以下切り捨て)」となり、税金額は20万5,181円です。
シミュレーション2:為替差益が300万円の場合
続いて、為替差益が300万円で、スワップポイントが8万円、諸経費が5万円だった場合、所得は「300万円+8万円-5万円=303万円」となります。
この場合、税率20.315%を掛けると「303万円×20.315%=61万5,544円(小数点以下切り捨て)」となるため、61万5,544円の税金が発生する計算です。
シミュレーション3:為替差益が1000万円の場合
最後の例として、もし為替差益が1,000万円、スワップポイントが10万円、諸経費が5万円だった場合、所得は「1,000万円+10万円-5万円=1,005万円」です。
この所得に税率20.315%を掛けると「1,005万円×20.315%=204万1,657円(小数点以下切り捨て)」となり、税金額は204万1,657円です。
FXの確定申告に必要な書類とは?
ここでは、FXの収益について確定申告する際に必要な書類を解説します。
必要な書類は全部で4つ
FXの確定申告に必要な書類は、以下の4つです。
- 申告書(第一表、第二表)
- 分離課税用の申告書第三表
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
- 所得税の確定申告書付表(繰越損失用)
もしFX取引で損失が出た場合、その損失を翌年以降に繰り越して控除するために所得税の確定申告書付表も用意しましょう。
申告書の作成に必要な書類は2つ
FXの申告書を作成する際に必要な書類は、以下の2つです。
- 年間取引報告書(年間損益報告書)
- 給与所得の源泉徴収票
年間取引報告書は、確定申告の際に取引の損益を把握するために欠かせません。取引を行っているFX会社のWebサイトからダウンロードしましょう。
一方、給与所得の源泉徴収票は勤務先から受け取るもので、給与所得と合わせた申告が必要な場合に利用します。
この2つの書類を基に、正確な申告書を作成しましょう。
FXの税率に関してよくある質問
最後に、FXの税率に関してよくある質問をまとめました。
海外FXの税金は高すぎるって本当?税率はいくら?
海外FXの税金が高いと感じる理由は、累進課税方式による総合課税が適用されるためです。海外FXで得た利益は、国内FXとは異なり、総合課税として申告する必要があります。この課税方式では、収益が増えるほど税率が上がるため、大きな利益を得た場合に高い税金がかかることになります。
具体的な税率については、以下の通りです。
課税所得 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超〜330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円超〜695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円超〜900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
これに加えて、復興特別所得税として所得税の2.1%が上乗せされ、さらに住民税が約10%追加されます。そのため、最終的な税率は合計で15%から最大で55%程度になる可能性があります。
このように、高額な所得に対しては非常に高い税負担が生じるため「海外FXの税金が高すぎる」と感じられるのも無理はないでしょう。
FXの利益に対する税金はいつ払う?
FX取引で得た利益に対する税金は、毎年の確定申告時期に申告し、納税する必要があります。
まず、確定申告に必要な書類を準備しましょう。必要書類には、マイナンバー、本人確認書類、源泉徴収票、経費の領収書、年間取引報告書などが含まれます。
次に、国税庁の「確定申告作成コーナー」を使って申告書を作成し、税務署に提出します。提出方法には、e-Tax、郵送、直接持参があり、e-Taxを利用する場合はICカードリーダーが必要です。
最後に、納税期限の3月15日までに所得税を納めます。所得税の納付は、自動振替、インターネットバンキング、クレジットカードなどさまざまな方法から選べます。住民税については、特別徴収か普通徴収の方法で支払いましょう。
特定口座を使ってFXの税金を源泉徴収できる?
株式の場合は「源泉徴収ありの特定口座」で取引すれば税金が現千挺するされため、確定申告が不要になります。
しかし、FXの場合は特定口座がないため、職業や所得に応じて必要になった際に確定申告しなければなりません。
申告を怠るとペナルティが発生することもあるため、必要な場合はしっかりと収入を申告しましょう。
まとめ
今回は、FXにおける税率と税金の計算方法について解説しました。国内FXの場合、FXで得た所得に対して20.315%の税率で税金が発生します。
確定申告が必要なケースは人によって異なるため、職業や年収と照らし合わせながら、必要に応じて申告しましょう。万が一、利益が発生しているのにも関わらず申告を怠った場合、ペナルティが科せられる場合もあるため注意が必要です。
記事で紹介したFXの税率に関する情報を参考に、自身のFX収益に対する税金の計算を間違えないようにし、必要に応じて確定申告の準備を進めましょう。