FXはゼロサムゲームではない？ゼロサム・非ゼロサムの違いを徹底解説

「FXはゼロサムゲームだから稼げないって本当？」「ゼロサムゲームのリスクが怖い」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

今回は、ゼロサムゲームの特徴や仕組みについて詳しく解説します。

「ゼロサムゲームの概念を知りたい」「FXにおけるリスク管理のポイントを学びたい」という方は、ぜひ参考にしてください。

ゼロサムゲームとは

ゼロサムゲームとは、勝者と敗者の間で利益と損失が完全に相殺される状況を指します。つまり、一人が得た利益は他の誰かが失った損失と等しいという性質を持っています。

FX（外国為替取引）はこのゼロサムゲームの一例です。ここでは、FX業者が市場の絶対的な勝者となり、トレーダーたちの間で生じる損益の合計が0になることから、ゼロサムゲームとして理解されます。

このような構造を理解することで、FX取引におけるリスクや戦略を見直し、より効果的な取引を行いやすくなるでしょう。

FXはゼロサムゲームではない？非ゼロサムゲームとは

「FXはゼロサムゲームである」といった声がある一方、FXはゼロサムゲームではなく「非ゼロサムゲームのうちマイナスサムゲームである」という意見もあります。

非ゼロサムゲームとは、勝者と敗者の割合が均一ではなく、どちらかに比重が傾いている性質を持つゲームを指します。

以下より、非ゼロサムゲームの種類として、マイナスサムゲーム、プラスサムゲームについて解説します。

マイナスサムゲーム

マイナスサムゲームとは、勝者と敗者の損益の合計が0を下回る状況を指します。このようなゲームでは、全体の利益が減少するため、参加者全員の損失が生じる可能性があります。

FX取引を例に挙げると、トレーダー同士の損益を考慮すると、業者を除外した場合、トレーダー間の損益の合計は常にマイナスとなります。これは、手数料やスプレッドなどのコストが発生し、これらが利益を圧迫するためです。

したがって、トレーダーにとっては、FXはマイナスサムゲームの要素を持つことになります。

プラスサムゲーム

プラスサムゲームとは、勝者と敗者の損益の合計が0を上回る状況を指します。このゲームでは、全体の利益が増加するため、参加者が共に利益を得る可能性があります。

例えば、株式投資はプラスサムゲームの代表例です。株式市場では、トレーダーが売買によって得られる損益に加え、企業が配当金を支払う仕組みがあります。この配当金により、株主は資産を増やす機会が得られ、全体的な利益の増加につながるでしょう。

つまり、株式投資は単に売買の結果だけでなく、企業の成長や配当によっても利益を生むことができるため、トレーダー全体にとって有利な環境が整っていると判断できます。

FXがゼロサムゲームと言われる理由

FXがゼロサムゲームと言われる理由として、以下の2つが挙げられます。

それぞれについて解説します。

通貨の等価交換であるから

FX取引は、通貨の等価交換が基本となるため、ゼロサムゲームとされています。たとえば、1ドルが150円のとき、Aさんが150万円を使ってBさんから1万ドルを購入したとしましょう。この時点では、AさんもBさんも損失を被ることなく、等価での交換が成立しています。

数日後、1ドルが160円に上昇した際、Aさんが1万ドルをCさんに160万円で売却したとします。この瞬間も等価交換であり、取引自体には誰も損得は生じていません。しかし、Aさんの手持ち資金が150万円から160万円に増えたため、「Aさんは10万円を得た」と考えることができます。その一方で、Bさんが持っていた1万ドルの価値が150万円から160万円に上がったため、彼の視点から見ると10万円の損失が発生したことになります。

最終的に、トレードの結果を集計すると損益の合計はゼロになるため、FXはゼロサムゲームであると位置付けられる場合もあるようです。

片方の通貨が上がるともう片方は下がるから

FX市場では、通貨の価値は常に変動しており、一見するとゼロサムゲームではないと考える人もいるでしょう。しかし、実際にはある通貨の価値が上昇すると、その反対の通貨の価値は必然的に下がります。たとえば、1ドルが150円のときにドルが上昇し、1ドルが160円に達した場合、円の価値は相対的に下落したことになります。

このように、通貨間の交換レートが変わる際、必ず一方が得をすれば、もう一方は損をするという関係が存在します。

これを考慮すると、全ての通貨の価値を合算した結果は、常にプラスマイナスゼロになります。つまり、トレーダーの間での利益と損失が相殺され、全体としての価値の変動がないため、FXはゼロサムゲームと見なされることがあります。

FXは完全なるゼロサムゲームとは言い難い！その訳とは？

上述で「FXがゼロサムゲームと言われる理由」を紹介しましたが、実際には、FXは完全なるゼロサムゲームとは言い難いです。その理由として、以下の3点が挙げられます。

それぞれ解説します。

取引高は常に変動する

FX市場において、取引高は常に変化しています。この取引高は、為替市場における全体の資金の流れや流動性を示すものであり、実際に取引される金額の総量を反映しています。取引高が変動するということは、市場全体の「パイ」が増減していることを意味します。

例えば、特定の経済指標が発表された際、投資家の関心が高まると取引量が増加し、市場に流入する資金が増えるでしょう。逆に、静かな時期や重要なニュースがない場合は、取引高が低下することもあります。このように、取引高の変動はFX市場の流動性やボラティリティに直接的な影響を与えます。

そのため、FX市場が常に一定の状態を保っているわけではなく、取引のパイが変化することで、ゼロサムゲームの概念が成り立ちにくくなるというわけです。

政府や中央銀行が市場に介入できる

為替市場の特異性の一つは、政府や中央銀行が市場に介入することができる点です。とはいえ、この介入によって、為替の「パイ」が固定されるわけではありません。たとえば、急激な円安が発生した場合、国は円のさらなる下落を防ぐために、市場で大量に円を買い支えることがあります。このような介入によって、通貨の価値や市場の流れが調整されます。

この事実は、FXが本質的にゼロサムゲームと見なされる従来の原則に反します。ゼロサムゲームでは、全体の資源や利益が固定されていることが前提ですが、FX市場では政府の介入によってその資源や利益の配分が変動します。

つまり、政府や中央銀行の行動が市場のダイレクトに影響を与えるため、FX市場ではパイが常に流動的であると言えるのです。

経済の成長によってパイが増減する

外国為替市場においても、国の経済成長は取引の「パイ」に直接的な影響を与えます。経済が成長することで、国の生産能力や購買力が向上し、その結果、通貨の価値が上昇することがあります。これにより、FX市場での取引高や流動性が増加し、全体のパイが拡大します。

反対に、経済が衰退すると企業の利益が減少し、消費が低迷します。このような状況では、通貨の価値が下がり、市場での取引量も減少するため、パイは縮小していくでしょう。この観点から見ると、FX市場は固定された資源や利益を前提とするゼロサムゲームには該当しません。

経済の成長と衰退によってパイが変動することは、トレーダーにとって重要な要素であり、為替市場における戦略や投資判断に影響を与えます。

FXがマイナスサムゲームである2つの理由

上記に加え、FXがマイナスサムゲームである理由として、以下の2つが挙げられます。

それぞれ見ていきましょう。

取引手数料やスプレッドがかかる

FX取引を行う際、個人投資家は必ずFX業者を介する必要があります。このプロセスでは、スプレッドや取引手数料といったコストが発生します。例えば、ある通貨ペアの買い価格と売り価格の差であるスプレッドが存在するため、投資家はエントリー時と決済時の価格が同じであっても、スプレッド分の損失を被ることになります。

そのため、トレーダーが利益を上げるためには、スプレッドや手数料を上回る利益を出さなければなりません。このコストが存在することにより、全体の損益がマイナスになりやすく、FX市場が実質的にマイナスサムゲームと呼ばれる理由の一つとなります。

利益に対して税金が発生する

FX取引で得た利益は、そのまま手元に残るわけではありません。日本に住むトレーダーは、得られた利益が1円でも発生した場合、住民税を支払う義務があります。さらに、一定の利益を超えると所得税も発生します。これにより、実際に手元に残る利益は税金によって減少します。

海外在住者も同様に、居住国の税制に基づいて税金を支払う必要があります。こうした税金の存在は、トレーダーが実際に享受する利益に影響を与え、資産の増加に対する負担となります。このように、得た利益に対して税金が発生するため、トレーダーはスプレッドや取引手数料を上回る利益を確保したとしても、その一部を税金として支払うことになる可能性が高いです。

その結果、FX取引は利益が出たとしても実質的な取り分が減少し、マイナスサムゲームと見なされる理由の一つとなります。

FXなどマイナスサムゲームの還元率はどのくらい？

FXを含むマイナスサムゲームの還元率の目安は以下の通りです。

FXは他のマイナスサムゲームよりも還元率が高い傾向にあるため、しっかりと分析した上で根拠を持ってトレードすることで、勝率を高められるゲームといえます。

ゼロサムではないFXで損失を抑えるためのポイント

FXで損失を抑え、利益を増やしていくためのトレードのポイントとして、以下の3つが挙げられます。

それぞれについて解説します。

ロット数を増やしすぎないこと

FX取引では、継続的に小さな利益を積み重ねることができる一方で、突発的な市場変動によって大きな損失を被るリスクも存在します。特に、急激な価格の下落や予期せぬネガティブニュースが発生すると、ロット数を過剰に増やしていた場合、思いもよらぬ損失を抱えることになります。

そのため、初めて取引を行う際や相場の状況が不安定なときは、ロット数を控えめに設定することが重要です。具体的には、自分の資金やリスク許容度に基づいてロット数を決定し、無理なポジションを取らないようにしましょう。

また、エントリー後に相場が予想に反して動いた場合は、速やかに損切りを行うことも大切です。損切りを怠ると、含み損が膨らみ、回復が難しい状況になることがあります。

チャンスだと感じたら利益を狙うこと

FXで成果を上げるためには、損失を抑えることと同時に利益をしっかりと伸ばすことが重要です。特に、トレンド相場は初心者でも比較的簡単に大きな利益を狙えるチャンスです。このような場面でエントリーの機会が訪れたとき、ためらっているとその利益を逃してしまいます。

一度トレードのルールを設定したら、そのルールに従い積極的にエントリーを行うことが必要です。特にチャンスと感じた瞬間は、思い切ってポジションを取ることが成績向上につながります。

もし、見送ってしまうと、その後に訪れるかもしれない利益を逃すだけでなく、トレード成績も悪化する恐れがあります。

感情的なトレードは辞めること

FXにおける失敗の多くは、感情に基づいたトレードから生じます。例えば、損失を取り戻そうと大きなロットで取引したり、利益を求めて過度に取引を繰り返すといった行動は、冷静な判断を妨げます。

また、含み益が減少すると焦って早めに利確してしまったり、損失を恐れて損切りを躊躇することも典型的です。これらの感情的な決断は、結果的に大きな損失を招く危険があります。

感情に流されることを避けるのは容易ではありませんが、冷静さを保つためには、トレードルールを確立し、そのルールに従うことが重要です。特に感情の波に流されやすいと感じる方は、EA（自動売買プログラム）の利用を検討するのも一つの手です。自動売買を活用することで、感情に左右されることなく、理論に基づいた取引が可能になります。

まとめ

今回は、ゼロサムゲームとは何かや、FXがゼロサムゲームではない理由について解説しました。また、FXがマイナスサムゲームである2つの理由についても触れました。

FXで成功するためには、取引手数料やスプレッドを意識し、利益に対して発生する税金を理解することが欠かせません。これらを考慮することで、より効果的なトレードが可能になります。

記事の内容を参考に、安定した収益を上げるための戦略を構築し、FX取引に取り組んでみてはいかがでしょうか。