「FXで失敗して自己破産することは可能なのか知りたい」「FX取引が自己破産に与える影響について知りたい」という方は多いのではないでしょうか。
今回は、FXで抱えた借金を解消するための自己破産手続きについて解説します。
自身が自己破産の対象として認められるかを知りたい方、借金問題を解決したいと思っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
FXによる借金は原則として自己破産できない
FX取引による借金は、基本的に自己破産によって免責を受けることが難しいです。これは、FX取引が免責不許可事由に該当するためです。
免責不許可事由とは、裁判所が借金の免除を許可しない特定の事情のことを指します。具体的には、破産法第252条第1項第4号において「浪費又は賭博その他の射幸行為によって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」と規定されています。
FX取引は、市場の価格変動を予測して行う売買であり、その性質上、射幸行為に含まれると見なされています。価格の変動を正確に予測することは非常に難しく、結果的にギャンブルに近いリスクを伴うため、FXによる損失を理由に自己破産を申請しても、裁判所が免責を認めることは少ないのが現状です。しかし、個々のケースによっては例外もあるため、詳細な状況を弁護士等に相談することが重要です。
以下より、FX取引による借金で自己破産が認められる場合、認められない場合についてそれぞれ解説します。
自己破産が認められる場合
FX取引による借金は原則として自己破産が難しいですが、例外的に裁判所の裁量で免責が認められる場合があります。これは「裁量免責」と呼ばれる制度で、破産法第252条第2項に基づいたものです。この条文では、免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所が破産手続開始の経緯やその他の事情を総合的に考慮し、免責を許可することができるとされています。
例えば、借金を抱えるに至った背景や、本人の反省の度合い、再発防止のための努力などが考慮されることがあります。特に、借金の原因が一時的なものや不可抗力的な要素が強い場合、または誠実に債務整理を進めている場合など、状況次第で免責が認められる可能性があります。
自己破産が認められない場合
FX取引による借金が認められない場合のケースとして、以下の項目が挙げられます。
- FX以外に複数の免責不許可事由がある
- 過去7年以内で破産したことがある
- 過去にFXで破産したことがある
- 破産の手続き中にFXを始めた
- 複数の借入先があり、特定の人に対してのみ返済している
- 財産を隠している
それぞれのケースについて、詳しく解説します。
FX以外に複数の免責不許可事由がある
FX取引による借金だけでなく、その他の投資やギャンブル行為も免責不許可事由に該当します。例えば、仮想通貨や株式投資、宝くじの購入、パチンコなどのほか、過度な浪費も同様です。これらの行為は、破産法において免責が認められない理由として明確に示されています。
裁判所は、債務者がこれらの行為により借金を抱えた背景や、その後の態度を慎重に評価します。特に、借金の原因となった行為に対する反省や再発防止の意志が見られない場合、裁量免責を受けるのは困難です。FXをやめても、他の投資やギャンブルを続けている場合、裁判所の印象が悪くなり、免責が認められない可能性が高まります。自己破産を成功させるためには、すべての免責不許可事由を理解し、誠実な態度で再建への意思を示すことが重要です。
過去7年以内で破産したことがある
過去7年以内に自己破産を経験している場合、再度の自己破産申し立ては認められません。破産法では、前回の自己破産から7年が経過していない場合、免責を受けることができないと規定されています。これは、前回の免責から十分な時間が経過していないため、経済的な再建や反省が十分に行われていないと判断されるからです。
前回の借金の原因がFX取引であろうと、他の理由であろうと関係なく、7年以内に再び免責を申し出ることは、経済状況の改善や反省の不足を示すものと見なされます。このため、裁判所は新たな免責を許可しないのが通常です。
自己破産を考える際には、この7年という期間を十分に考慮し、他の債務整理方法を検討する必要があるでしょう。再度の自己破産が難しい場合は、専門家に相談し、適切な対応策を見つけることが重要です。
過去にFXで破産したことがある
過去にFX取引が原因で自己破産を経験している場合、再度の自己破産はさらに難しくなります。たとえ前回の自己破産から7年以上が経過していたとしても、同じ免責不許可事由が再び問題となる可能性が高いです。同じ原因で繰り返し破産を申請することは、反省が見られないと判断され、裁量免責を受けることが難しくなります。
さらに、FX以外のギャンブルや先物取引、株式投資なども同様に考慮されます。前回の自己破産の原因がこれらの投資やギャンブルであった場合、再度の自己破産申請時にこれらが免責不許可事由として問題視されることになります。裁判所は債務者の態度や行動を厳しく評価し、反省と再発防止の意思が明確でない限り、免責を認めるのは難しいでしょう。そのため、過去に自己破産を経験している方は、特に注意が必要です。
破産の手続き中にFXを始めた
自己破産手続き中にFX取引を再開すると、免責を受けることが非常に難しくなります。裁量免責の判断においては、債務者が借金の原因となった行為を十分に反省しているか、そして生活再建に向けて誠実に努力しているかが重要視されます。破産手続き中にもかかわらず、再びFXを始める行為は、これに反する行動として見なされます。
元々FX取引が原因で借金を抱えたにもかかわらず、再度同じ行為を繰り返すことは、反省の色が見られないと判断されます。このような場合、裁量免責を受けるのは極めて難しくなるでしょう。
裁判所に誠実な態度を示し、再び同じ過ちを繰り返さないことを明確にするためには、FXをきっぱりと辞めることが必要です。反省の意を行動で示すことが、自己破産の成功に繋がる重要な要素となります。
複数の借入先があり、特定の人に対してのみ返済している
自己破産手続きにおいては、「債権者平等の原則」が厳格に適用されます。これは、すべての債権者を平等に扱い、特定の債権者だけに優先的に返済することを禁じる原則です。複数の借入先がある場合、一部の債権者にのみ返済を行うと、「偏頗弁済」と見なされ、自己破産が認められない可能性が高いでしょう。
例えば、車を手放したくないために自動車ローンを優先して完済しようとしたり、友人からの借金だけを返済したりすることは、他の債権者に対して不公平であると判断されます。自己破産を成功させるためには、すべての債権者に対して公平な対応をしなければなりません。
財産を隠している
自己破産手続きにおいて「財産隠し」は厳しく禁じられています。債務者が一定額以上の財産を持っている場合、その財産を現金化して債権者への返済に充てる義務があります。自己破産を申請する際に、土地や車などの財産を配偶者や子ども、親の名義に変更したり、銀行口座の名義を他人に変える行為は「財産隠し」に該当します。
また、預金残高を他人の口座に送金したり、不動産の登記名義を他人に変更することも同様です。これらの行為は裁判所や破産管財人によって徹底的に調査され、発覚した場合、免責が認められなくなる可能性が非常に高いです。財産隠しを行うことで、最終的には自己破産手続き自体が失敗に終わるリスクがあります。誠実に全ての財産を開示し、正当な手続きを踏むことが、自己破産を成功させるための重要なポイントです。
FXで失敗し自己破産する時に気をつけたいこと
万が一FXで失敗してしまい、自己破産を検討する際に気をつけるべきポイントとして、以下が挙げられます。
- FXをやめること
- 誠実に手続きを行うこと
それぞれについて解説します。
FXをやめること
自己破産を決意した際には、まずFX取引を完全にやめることが重要です。裁判所が裁量免責を判断する際、債務者が過去の行動を反省し、再建に向けて真摯に取り組んでいるかどうかが重視されます。FX取引を続けていると、反省の意志が見られないと判断され、免責が認められない可能性が高まります。
自己破産は新たなスタートを切るための手段であり、そのためには過去の失敗を繰り返さない姿勢が求められます。生活再建に向けて安定した経済活動を目指し、再び同じ過ちを繰り返さない意思を見せることが大切です。
誠実に手続きを行うこと
自己破産の手続きを進める際には、誠実に対応することが非常に重要です。裁判所が裁量免責を判断する際には、手続きをどれだけ誠実に進めているかが考慮されます。手続きの過程で、裁判所や破産管財人からの説明や調査に対して真摯に協力する姿勢が求められます。
具体的には、裁判所への説明を拒否したり、破産管財人の調査に非協力的な態度を取ると、それ自体が免責不許可事由となり、免責が認められない可能性があります。自己破産を円滑に進め、免責を受けるためには、常に誠実な態度で臨むことが不可欠です。
自己破産を申し立てるとFXはできなくなるのか?
「自己破産を申し立てる場合、今後FXはできなくなるの?」といった疑問があるかもしれません。
ここでは、手続き中に取るべき対応や既存の口座や新規口座の解説などについて、それぞれ解説します。
手続き中は辞めるべき
自己破産手続き中のFX取引は絶対に避けるべきです。裁判所や破産管財人は、手続き中にFX取引を続けている債務者を反省不足とみなし、免責を認められないだけでなく、申立代理人が辞任する可能性もあります。
自己破産手続きは再出発を図るための重要なプロセスであり、その過程での行動が免責の可否に影響します。自己破産手続き中は、まずは借金問題の解決に全力を注ぎましょう。安定した生活を取り戻すために、FX取引などのリスクの高い行動は控えることが重要です。
免責を受けるためには、裁判所や破産管財人からの信頼を得ることが不可欠です。
既に開設した口座はどうなる?
自己破産した場合、裁判所と証券会社のそれぞれによって、既存のFX口座の取り扱いが異なります。
- 裁判所:自己破産申立時には、過去2年分の預貯金口座やFX口座の取引明細を裁判所に提出する。破産管財人はFX口座の残高を調査し、処分の対象となる場合がある。
- 証券会社:一般的に、自己破産申立が直接口座の解約につながることはない。ただし、口座を長期間使用していない場合や、約款に違反する取引が行われている場合、口座を凍結または解約する可能性がある。
自己破産が直接口座の解約につながることはまれですが、口座の取引履歴や証券会社の方針によっては、凍結や解約のリスクがある点に注意しましょう。
新たに口座を開設できない?
一般的に、FX口座の審査ではブラックリスト(信用情報機関の登録)は見られず、年収や勤務先といった登録者による申告内容に基づいて行われます。そのため、ブラックリストに載っていることが口座開設の障害となることはありません。
ただし、自己破産の手続き中に新たにFX口座を開設することは厳禁です。手続き中に口座を開設すると、再び同じ過ちを犯すとみなされ、免責が認められない可能性が高まります。
FXで失敗し、自己破産できない場合はどうなる?
もし自己破産できないと判断された場合、以下のいずれかの方法を検討することで、借金問題の解決に向かっていける可能性があります。
- 個人再生
- 任意整理
個人再生は、自己破産が認められない場合でも借金問題を解決する手段の一つです。個人再生では、裁判所の介入を通じて債務の一部を減額し、残りを分割払いで返済することが可能です。個人再生は、債務者の経済状況や返済能力を考慮して柔軟な支援を提供するため、自己破産よりも信用情報への影響が軽減されることがあります。
また、任意整理とは、債務者と債権者が話し合いを通じて借金の返済条件を再編成する手続きです。任意整理では、返済金額の減額や利息のカット、返済期間の延長などが行われ、債務者の経済負担を軽減します。任意整理は自己破産と異なり、裁判所の介入がないため手続きがスムーズに行われやすいことが特徴です。
まとめ
今回は、FXで抱えてしまった借金について自己破産を検討する際、破産が認められるケースや認められないケースのそれぞれについて解説しました。
基本的にFXによる借金を自己破産することは難しいとされていますが、借金を抱えるに至った背景や本人の反省度合いなどによっては、自己破産が認められる場合があります。必ずしも自己破産が認められるとは限りませんが、専門家に相談しながら適切な対応を取り、再建に向かっていくことが大切です。