「FXの確定申告が面倒だ」「そもそも青色申告ができるのか気になる」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
FXで発生した利益に対する税金を適切に管理するためには、要件を理解し、必要な書類を用意して期限内に確定申告をすることが欠かせません。
今回は、FXにおける確定申告について詳しく解説します。
「FX利益について確定申告する方法を知りたい」「申告の手間を最小限に抑えたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
FXで得た利益は青色申告の対象になる?
FX取引から得られる利益について、確定申告を行う際は白色申告に限られます。
青色申告は、事業所得を得る個人事業主が利用するもので、税金控除のメリットがありますが、FXの収益は事業所得として認められていないため、青色申告を行うことはできません。
過去には、FX収益が事業所得に該当するかどうかを巡って裁判が行われた事例もありますが、裁判所はFXの収益を事業所得とは認めないとの判断を下しました。したがって、FXトレーダーは確定申告の際には白色申告を選択し、適切に収益を報告する必要があります。FXで得た利益を申告する際は、白色申告を利用することを忘れないようにしましょう。
FXは得た利益に対して税金が発生する
FX(外国為替証拠金取引)は、外貨を売買することで利益を得る方法であり、預けた証拠金を元に大きな取引が可能です。FXで得た利益には、いくつかの税金が課せられます。具体的には、所得税が15%、住民税が5%、そして復興特別所得税が0.315%(2037年まで適用)です。
所得税は申告納税方式であるため、利益を得たトレーダーは自ら税額を計算し、確定申告を通じて納税を行う必要があります。なお、住民税については、所得税の確定申告を行えば、別途申告する必要はありません。
これらの税金を理解し、適切に納税を行うことは、FXトレーダーとして重要な責任の一つです。
FXにおいて確定申告が必要な人
FXで得た利益に対して確定申告が必要な人の特徴として、以下の3パターンが挙げられます。
- 年末調整を受けていない人
- FX利益や副業所得を合わせて年間20万円を超える人
- FX以外の理由があって確定申告をする人
それぞれ解説します。
年末調整を受けていない人
年末調整を受けていない人は、FX取引で得た利益に対して確定申告を行う必要があります。具体的には、企業に勤務していない個人事業主や、年間給与収入が2,000万円を超えている会社員が該当します。これらの人々は、年末調整の対象外となるため、所得税を自分で計算し、確定申告を行わなければなりません。
一方で、主婦や無職の方など、FX以外の収入がなく、FXの利益が年間48万円以下の場合は、申告の義務がありません。このように、年末調整の有無や所得状況によって、確定申告が必要かどうかは異なるため、自身の状況を確認することが重要です。確定申告を通じて適切な税務処理を行い、税負担を軽減しましょう。
FX利益や副業所得を合わせて年間20万円を超える人
FX取引の利益や副業から得た収入が年間で合計20万円を超える場合、確定申告が必要です。この20万円は、FXの利益や副業の給与収入を合算した額で、特に副業所得は、実際の収入から経費を差し引いた金額を指します。
たとえば、本業の給与収入に加え、ライティングの副業で15万円の収入、さらにFXの利益が10万円で合計25万円に達するケースが該当します。
たとえ年末調整が行われていても、合計が20万円を超える場合には、申告の義務が発生します。このため、FXや副業の収入状況をしっかり把握し、必要に応じて確定申告を行うことが重要です。税務上のルールを守ることで、後々のトラブルを避けられますので、自身の所得の合計を定期的にチェックしましょう。
FX以外の理由があって確定申告をする人
医療費控除やふるさと納税、住宅ローン控除など、FX以外の理由で確定申告を行う必要がある場合、その際にFXの利益も申告する必要があります。特に、これらの控除は年末調整では適用できないため、確定申告が不可欠です。
このようなケースでは、FXの取引から得た利益にかかわらず、全ての所得を申告しなければなりません。
また、年間を通じてFXの取引で損失が出ている場合、確定申告を行う義務はありません。なお、損失を申告することで将来の利益と相殺できるメリットが得られる可能性があります。
したがって、FXを行っている人は、自身の利益や損失の状況を把握し、必要に応じて確定申告を行うことが重要です。以下より損失を申告すべき理由について解説します。
FXで損失が出ていても確定申告すべき理由とは?
FXで損失が出ていても確定申告すべき理由として、以下の2つが挙げられます。
- 損益通算できるから
- 繰越控除を受けられるから
それぞれ解説します。
損益通算できるから
FX取引で損失が出た場合でも、確定申告を行うことで損益通算が可能です。損益通算とは、異なる取引で発生した利益と損失を相殺し、最終的な課税所得を減少させる手続きのことです。
例えば、FXでの損失があっても、他の投資から得た利益と相殺することで、納税額を軽減できます。
また、FXの損失は3年間繰り越して申告することが可能です。これにより、将来的に利益が出た際に、過去の損失を利用して税負担を減らすことができるため、資産運用の効率を高めるメリットがあります。
したがって、たとえ損失が出ている場合でも、確定申告を行うことは非常に重要です。損益通算を活用し、税制を最大限に利用することで、賢い資産管理を実現しましょう。
繰越控除を受けられるから
繰越控除は、FX取引で発生した損失を翌年以降に繰り越して、利益と相殺できる制度です。この制度により、損失が出た年に利益がなくても、翌年から3年間にわたって「先物取引に係る雑所得等の金額」を上限に繰越し、将来の利益に対する課税を軽減することが可能です。
ただし、繰越控除を利用するには、毎年の確定申告が必要です。FXの損失を申告する際には、FX以外の所得も一緒に申告しなければなりません。たとえ副業所得が20万円以下で申告義務がない場合でも、FXの申告を行うためにはその情報も合わせて報告する必要があります。
さらに、確定申告を行うと、ふるさと納税のワンストップ特例を利用できなくなる点にも注意が必要です。これまでワンストップ特例を申請していた場合、全てのふるさと納税を再度申告する必要があります。
FXについて確定申告をする前に必ず確認したい「必要経費」とは?
FX取引を行う際には、利益を得るためのさまざまな経費が発生します。これらの経費は、確定申告の際に必要経費として計上でき、税負担を軽減する手助けとなります。具体的にどのような経費が必要経費として認められるのか、確認しておきましょう。
まず、FX取引に欠かせないのがパソコンです。市場の動向をリアルタイムで把握するためには、性能の高いパソコンが必須です。このパソコンの購入費用は、必要経費として計上できます。また、インターネット接続にかかる通信費も忘れずに経費に含めましょう。
次に、FXに関するセミナーや講習を受ける場合、その参加に必要な交通費も必要経費です。特に遠方で行われるセミナーの場合、宿泊費や食事代も経費として計上可能です。こうした支出については、必ずレシートを保存しておくことが重要です。
さらに、FX取引を行う際にかかる取引手数料や、得た収益を銀行口座に入金する際の手数料も必要経費の一部です。これらは毎回発生する費用ですが、累積すると無視できない金額になりますので、正確に把握しておきましょう。
FXの確定申告で必要な書類と書き方
ここからは、FXの利益について確定申告する際に必要な書類とその書き方について解説します。
必要な書類
FXの確定申告について、進め方をわかりやすく解説します。FXの確定申告をすることになったらまず、確定申告に必要な書類をそろえましょう。用意しなければならない書類と入手先は下記のとおりです。
書類 | 入手できる場所 |
確定申告書 第一表 | 国税庁のWebサイトもしくは税務署 |
確定申告書 第二表 | 国税庁のWebサイトもしくは税務署 |
確定申告書 第三表 | 国税庁のWebサイトもしくは税務署 |
先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書 | 国税庁のWebサイトもしくは税務署 |
年間取引報告書 | 証券会社 |
給与所得の源泉徴収票 | 勤務先給与所得がある方のみ必要 |
所得税の確定申告書付表 | 国税庁のWebサイトもしくは税務署 |
加えて、本人確認書類を持参しましょう。
また、所得控除(医療費控除や寄附金控除)のほか、副業で得た所得についても副業所得の申告を行う場合は、申告内容に応じた書類が必要です。
書類の書き方
最後に、FXにおける確定申告に必要な書類の書き方について解説します。
先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
FX取引を行った場合、確定申告には「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を提出する必要があります。この書類は、FXで得た利益を正確に計上し、税務上の手続きを円滑に進めるための重要なものです。以下に、記入方法について詳しく説明します。
まず、明細書の最上部には「雑所得用」の欄がありますので、ここに○をつけます。次に、氏名欄には納税者本人の名前を正確に記入してください。続いて、「取引の内容」セクションには、以下の情報を記載します。取引の種類には「外国為替取引」と明記し、決済の方法として「仕切」と記入しましょう。決済年月日と数量については、年間の取引をまとめて記載できるため、未記入でも問題ありません。
次に、(A)から(C)の欄には、差金決済取引や譲渡ごとに収入金額や経費を記入します。ここでの差金決済とは、実際の資産の受け渡しがなく、価格の差異だけで決済が行われる取引のことです。FX取引はこの差金決済に該当しますので、正確な記入が求められます。
「総収入金額」欄には、証券会社のWebサイトからダウンロードできる「年間取引報告書」のデータをもとに、年間の収入を記入します。この報告書には、取引の詳細や得られた利益が明記されていますので、これを参考にしましょう。
また、「必要経費等」には、FX取引のためにかかった経費を記入します。具体的には、参加したセミナーの費用、関連書籍の購入費、さらには取引に使用したパソコンの購入代金などが含まれます。これらの経費をしっかりと計上することで、課税所得を軽減することができます。
最後に、収入から経費を差し引いた金額を「所得金額(12)」の欄に書き入れます。この時、合計欄への記入も忘れずに行いましょう。これにより、正確な申告が可能となります。
確定申告書
FX取引を行った場合、確定申告書の第三表には、先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書からの情報を記入する必要があります。この作業は、申告内容を正確に反映させるために非常に重要です。
まず、「収入金額」の欄にある「分離課税」「先物取引(ト)」の部分には、明細書に記載した収入金額の合計を転記します。このステップでは、他の収入と混同しないように注意が必要です。
次に、「所得金額」の「先物取引(74)」の欄には、収入から必要経費を引いた金額を記入します。これは明細書内の「所得金額(12)」に記載した数字です。経費を適切に引くことで、課税対象となる金額を正確に算出できます。
続いて、「税金の計算」欄では、「総合課税の合計額(12)」と「所得から差し引かれる金額(29)」に関しては、確定申告書第一表の数字をそのまま転記します。ここで、FXの利益は含めない点にも注意が必要です。
その後、課税される所得金額の「(12)対応分(77)」欄には、先ほど転記した「総合課税の合計額」から「所得から差し引かれる金額」を引いた結果を記入します。
まとめ
今回は、FXで得た利益が青色申告の対象にならないことや、FXで得た利益に対して税金が発生する点について解説しました。また、FXにおいて確定申告が必要な人や、確定申告で必要な書類とその書き方についても触れています。
FXの確定申告を行うためには、必要な書類を正しく準備することや、申告書の記入方法を理解することが欠かせません。
記事の内容を参考に、正しい納税手続きを行い、安心してFX取引を続けられるよう、確定申告に取り組んでみてはいかがでしょうか。