「FXにおけるスプレッドの意味が分からない」「トレードする際のスプレッドの選び方に不安がある」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
スプレッドについて理解するには、基本的な定義や取引における影響を理解することが欠かせません。
今回は、スプレッドの概要や取引に与える影響について詳しく解説します。
「FXでスプレッドが動くタイミングを知りたい」「スプレットが広がった際の対処法を知りたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
投資におけるスプレッドとは?
まずは、投資用語として使われる「スプレッド」について、意味と計算方法を理解しましょう。
スプレッドの意味
スプレッドは買値と売値の差であり、実質的な取引コストを表します。例えば、ドル円の通貨ペアで買値が150円、売値が149.99円であれば、スプレッドは0.01円となります。この差額はトレーダーが取引を開始する際に必ず負担するコストであり、スプレッドが狭いほど取引のコストは低くなる仕組みです。
一方、スプレッドが広い場合は取引コストが増加するため、利益を上げるためには相場がより大きく動く必要があります。特に短期取引を行う際には、スプレッドの狭さが勝敗を分ける重要な要因となります。
トレーダーにとって、スプレッドが狭い通貨ペアを選ぶことは、取引コストを最小限に抑え、利益を最大化するための基本的な戦略です。流動性の高い市場や通貨ペアほどスプレッドが安定して狭くなる傾向があるため、これらを選ぶことが有利な取引につながるでしょう。
スプレッドの計算方法
スプレッドは取引にかかるコストを示すもので、主に「銭」と「pips」の2つの単位で表示されます。「銭」は日本円を含む通貨ペアで使われ、1円は100銭に相当し、1銭は0.01円です。
一方「pips」は日本円を含まない通貨ペアで用いられ、例えば米ドル/円では1pipsが0.01円(1銭)、ユーロ/米ドルでは0.0001ドルです。
スプレッドが1銭の場合、100通貨の取引で1円のコスト、1万通貨で100円のコストが発生します。FX取引では、通常の生活感覚とは異なり大量の通貨を売買するため、スプレッドの影響はより大きくなります。
なお、スプレッドの値はFX提供会社によって異なるため、取引前に確認することが重要です。
スプレッドにおける「原則固定」の意味
「原則固定」とは、FX取引においてスプレッドが基本的に変動せず、一定の範囲内で提供されることを指します。スプレッドは通常、通貨ペアごとに設定されるもので、市場の状況や流動性によって変動するのが基本です。
しかし、原則固定を採用するFX会社では、スプレッドの変動を最小限に抑え、予め定められた範囲内で安定して提供されるようにしています。
これにより、投資家は取引を行う際にスプレッドの変動による取引コストの不確実性を避けられるメリットがあります。原則固定のスプレッドでは、取引前にスプレッドのコストを把握できるため、計画的な取引が可能です。
一方、原則固定以外には変動スプレッドがあり、これによりスプレッドは時間帯や市場の状況によって広がる可能性があります。
スプレッドがFX取引に与える影響
スプレッドは、FX取引において重要な要素であり、購入価格と売却価格の差が取引の損益に大きく影響します。例えば通貨ペアが「米ドル/円」だった場合、スプレッドが異なる2つのFX業者を比較してみます。
米ドル/円の買値が100円で、1つの業者がスプレッド0.2銭、もう1つの業者が0.6銭であるとしましょう。取引条件が同じでスプレッドのみが異なる場合、スプレッドの差が利益にどれほど影響するか見てみます。
まず、スプレッドが0.2銭の業者を利用して100円で10万通貨を購入し、価格が100.6円になった時に売却する場合、損益は以下の通りです。
- 買う時:買値100円、売値99.998円で10万通貨購入(コストは10,000,000円)
- 売る時:買値100.6円、売値100.598円で10万通貨売却(売却額は10,059,800円)
- 取引の損益:59,800円の利益
次に、スプレッドが0.6銭の業者で同じ取引を行った場合は以下の通りです。
- 買う時:買値100円、売値99.994円で10万通貨購入(コストは10,000,000円)
- 売る時:買値100.6円、売値100.594円で10万通貨売却(売却額は10,059,400円)
- 取引の損益:59,400円の利益
この比較から、スプレッドの差が0.4銭あるだけで、利益に400円の違いが出ることが分かります。スプレッドが狭い業者で取引することで、コストを低く抑えられ、取引の利益を最大化できる仕組みです。
FXでは取引量が多くなるため、スプレッドの影響は大きくなります。一見小さな差に思えるスプレッドも積み重なることで大きなコスト差となるため、スプレッドの狭い業者で取引することが取引コストの節約につながります。
FXでスプレッドが大きく動く2つのタイミング
FXでスプレッドが大きく動くタイミングは、主に以下の2つがあります。
- 価格が大きく変動した時
- 通貨の流動性が低い時
それぞれについて解説します。
価格が大きく変動した時
価格が大きく変動する際には、FX取引においてスプレッドが広がる可能性が高まります。しかし、市場が大きく動いた場合、このスプレッドが急に広がることがあるため注意が必要です。
例えば、通貨の価格が急上昇や急落すると市場の流動性が低下し、売買バランスが崩れやすくなります。これにより、取引所がリスクを管理するためにスプレッドを拡大することが一般的です。
スプレットが拡大する具体的な仕組みとしては、価格が急騰した場合、多くの投資家が買い注文を出し始めます。このとき、売却する人は少ないため売値が押し上げられ、結果としてスプレッドが広がる、といった流れです。
反対に価格が急落した場合も、売り注文が急増して買値が下がることで、スプレッドが広がります。この現象は、特に重要な経済指標の発表直後や市場に不安定な要素がある時期に顕著に現れやすくなります。
そのため、価格変動が激しいタイミングでの取引は、スプレッドの急激な拡大によるコスト増加に注意が必要です。トレーダーはこのリスクを理解し、取引タイミングを慎重に選ぶことが求められます。
通貨の流動性が低い時
通貨の流動性が低い時にも、FX取引においてスプレッドが広がりやすくなります。流動性とは、特定の通貨ペアの取引市場でどれだけ多くの買い注文と売り注文が行われているかを示す指標です。
流動性が高い市場では買い手と売り手が多く、取引が活発に行われているため、スプレッドも比較的安定して狭い状態が維持されます。これは、売買のバランスが取りやすく、取引がすぐに成立するためです。
しかし、流動性が低くなると、市場における注文の数が減少します。特に、買い手と売り手のバランスが崩れることで、スプレッドが広がりやすくなります。これは、売りたい人がいても買い手が少ない、あるいはその逆の場合に取引が成立しにくくなるためです。
その結果、取引所やブローカーはリスクを回避するためにスプレッドを拡大することが多くなります。
特に、取引量が少ないマイナーな通貨ペアでは、この傾向が現れやすいです。メジャーな通貨ペアに比べて取引が少ないため、ちょっとした市場の変動でもスプレッドが大きく広がる可能性があります。取引の不利な状況を避けるためには、流動性が低い時やマイナー通貨ペアでの取引には注意が必要です。
FXでスプレッドが決まる要因
FXのスプレッドは、外国為替市場のレートを基に各FX提供会社が決定します。
通常、提供会社は投資家に安定した取引環境を提供するため、各通貨ペアのスプレッドを公開し、基本的には固定した状態で提供しています。しかし、市場が急変する際や流動性が低下する時間帯(週末や年末年始、重要な経済指標の発表時など)にはスプレッドが一時的に広がることがあります。
ただし、これらは例外的な状況であり、通常の取引ではスプレッドは公開された範囲内で取引されることがほとんどです。そのため、投資家はスプレッドの変動を理解し、取引のタイミングを見極める必要があるでしょう。
FXでスプレッドが広がった場合の対処法
FXでスプレッドが広がってしまった場合、以下の対処法を試してみましょう。
- 様子を見る、もしくは他の通貨を検討する
- 流動性の高い通貨を選ぶ
それぞれについて解説します。
様子を見る、もしくは他の通貨を検討する
スプレッドが急激に広がった場合、取引を急がず状況が落ち着くまで様子を見ることが大切です。
特に、相場が一方的に動いている時や市場が不安定な時期には、スプレッドが広がりやすくなります。この広がりは、買値と売値の差が大きくなると取引コストが増大し、利益を上げるためのハードルが高くなることを意味します。急激なスプレッドの拡大は、特に重要な経済指標の発表や市場の動揺時に見られ、投資家にとって不利な状況を生み出します。
このような状況では、無理に取引を行うよりも、スプレッドが安定するまで待つほうが安全です。相場が落ち着き、スプレッドが通常の範囲に戻るまで待つことで、無駄なコストを避け、より有利な条件で取引をおこないやすいです。
また、単純に待つだけでなく、スプレッドが狭い他の通貨ペアを検討することも有効な戦略です。市場の状況に応じて、流動性が高く、スプレッドが安定している通貨ペアに目を向けることで、より良い取引条件を得られるでしょう。
冷静な判断と柔軟な対応が求められる場面では、こうしたアプローチが、リスクを抑えつつ安定した取引を実現する鍵となります。スプレッドの動向をしっかりと追い、状況に応じて最適な行動を選ぶことで取引の成功率を高めましょう。
流動性の高い通貨を選ぶ
スプレッドを抑え、取引コストを最小限に抑えるためには、流動性の高い通貨を選ぶことが重要です。流動性とは、市場でどれだけ多くの売買が行われているかを示す指標であり、流動性が高いほど取引が活発に行われていることを意味します。
流動性の高い通貨では、買い手と売り手が常に多いため、スプレッドも安定して狭く保たれる傾向があります。これは、取引コストが低く抑えられることを意味し、投資家にとって有利な環境といえます。
具体的には、主要通貨ペア(例えば、米ドル/円やユーロ/米ドルなど)は取引量が多く、流動性が高いため、スプレッドが安定していることが多いです。また、仮想通貨市場においても、ビットコインや取引量の多いアルトコインは、流動性が高くスプレッドが狭いため、取引コストを抑えやすくなります。
反対に、流動性が低いマイナーな通貨ペアや取引量の少ないアルトコインでは、スプレッドが広がりやすく、コストが増大するリスクがあるため注意しましょう。
取引戦略を立てる際には、流動性の高い通貨を選ぶことがリスク管理の一環としても重要です。特に、重要な経済指標の発表や市場の急変時には、流動性の高い通貨が安定した取引環境を提供しやすいです。このように、流動性が高い通貨を選ぶことで、スプレッドの変動リスクを抑え、より安定した取引を実現可能です。
FXのスプレッドと関係する「掲示率」とは
提示率とは、FX取引において公開されたスプレッドが実際に取引可能な時間の中で、どの程度そのスプレッド以下であったかを示す指標です。
具体的には、一定期間(通常は直近4週間)において、提示されたスプレッドが実際の取引でどれだけ安定していたかを表します。たとえば、スプレッドが「原則固定」とされる場合、この提示率は95%以上であることが求められます。
つまり、スプレッドが指定された値以下で維持される時間が、全体の95%以上でなければならないということです。
FX提供会社によって提示率は異なるため、取引の際にはスプレッドの狭さだけでなく、提示率の高さも考慮することが重要です。
まとめ
今回は、FXにおけるスプレッドの意味や計算方法、スプレッドが動く原因、スプレッドが広がった時の対処法について解説しました。スプレッドを理解することは、FXで継続的に利益を得る上で欠かせません。
スプレッドがFX取引にどのように影響を与えるのか、スプレッドが広がった場合はどのように対応すれば良いのかを考えながら、戦略的なFX取引ができるように取り組んでみてはいかがでしょうか。